終わりで始まり ー考察ー
僕にとって一番、大事な曲かもしれない。
今回はamazarashiの楽曲「終わりで始まり」について、考察していく。
まずは曲の紹介として、
この曲はベストアルバムにも収録されているが、
「あんたへ」というミニアルバムにて初めてバンド音源が収録された曲である。
しかし、コアなファンならご存知だろうが、
初めてこの曲が公開されたのは、
「あんたへ」が発売されるよりもっと前。
初のライブDVD「0.7」のエンディングを飾った曲でもある。
この時はバンド音源ではなく、
アコースティックギター1本で弾き語る、というものだった。
初回限定版のLIVE音源には、ボーナストラックとして
「終わりで始まり」のアコースティックバージョンが収録されているので、
正確には初めて「終わりで始まり」が収録されたのはこの時である。
今でこそひろむの弾き語り音源の数は増えつつあるが、
その原点と言われたら、この曲なのではないか、とも思う。
少し話が逸れたな。
そして、数々の分岐点を経てきたamazarashiだが、
このライブDVD「0.7」の製作も大きな分岐点の一つだった事は
言うまでもない。
それまで、自分を肯定するために歌を作ってきたひろむがライブを通じて、
自分の歌に興味を持ってくれた人、
同意を示してくれた人、
好感を抱いてくれた人、
そして救われた人がいることを肌で感じていく。
それと同時に、
自分の曲に否定的な意見を持つ人もいることも知り、
それだけ自分の歌が認知され、
自分自身のやってきたことが誰かに、何かに、
影響を与えていることを実感した頃でもあるだろう。
自分と他者、その関係性が
浮き彫りになってきたこの頃だからこそできた楽曲、「終わりで始まり」には
それまでとは違っていて、でも確かに地続きであることが
しっかりと刻まれた楽曲となっている。
ちんたら書いてたら曲紹介だけでこんなに文章が長くなってしまった。
もし興味を持ってくれたのなら、
ぜひ「終わりで始まり」を聴いて欲しい。
そして欲を言えばライブDVD「0.7」もぜひ観てみて欲しいものだ。
さて、楽曲考察に戻ろう。
ひろむ自身が言うように「終わりで始まり」は、
amazarashiの数ある楽曲の中でも
それまでの人生のまとめ曲のひとつとして歌われている。
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いつもの帰り道ふと 見上げたいつもの夜空
なぜだか あの頃とは違って見えたんだ そうだな
ぼくも 少しはまともになれたかな いや そうでもないか
今も変わらず 上手く笑えない毎日です
あの頃の仲間も 無茶はしなくなった
そりゃそうだ あいつも 立派な父親だもんな
部屋の中で死にそうな 顔をしていた僕も
今じゃこんな歌も歌えるようになった
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昔に比べたら、色々と変わったような気がする。
でも何も変わっていないところもあるような気もする。
だが、その歌声は、どこか穏やかだ。
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友達のおかげで立ってるんだ 家族のおかげで歩けるんだ
あなたのおかげで生きてるんだ
「ありがとう」なんて言いたかねぇや でもさ
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常にいろんな人のおかげで人生は成り立っている。
そこに感謝の気持ちがないわけじゃない。
でも恥ずかしさからか、プライドからか、
素直になれない自分はまだいる。
それでも言いたいことがある。
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いつか僕らが離れ離れになる その時だって笑っていたい
塞ぎ込んだ過去も正しかったと 言い張るために笑っていたい
それだけでいつかの 叶わなかった夢も ただの過ぎた景色になるんだ
結局空っぽのままのこの手を 僕らは大きく振りあって
答えさえ見つけられなかった目に 涙を溜めてさよならして
悲しむな これがスタートラインだよ 僕らの終わりで始まり
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生きている限り、出会いや別れはつきものだ。
希望と絶望を行ったり来たりするものだ。
叶わなかった夢も、悔しい思いも、溢れる涙も、
限りなく、増えていく。
それでも時が経って振り返った時に
驚くほど、それらが気色ばんで見えて、
見えるものも、手にしたものも
大きく変わっているものだ。
でも、それらが間違いなく地続きだった事は疑いようもない。
だからどんな時だって何かの始まりなんだ。
それは時が経ってようやく気がつくものなんだ。
ーーーーー
この世界はそれほど 綺麗なもんじゃないけどさ
そんなに急いで出て行く 事は無いじゃないか
僕等の期待を 世界はよく裏切るけれど
期待していなかった喜びに 時々出会えるんだ
ーーーーー
この世界は意地悪くて、
嫌な思いや苦しい思いをすることが幾度となく訪れる。
死にたい、そう思うことだってもちろんあるかもしれない。
でも、ふとした時に出会える幸福に
僕らは薄情にも生きていてよかった、なんて手のひらを返すこともある。
だからそんなに急いでこの世界を出て行かなくてもいい。
ふとしたその幸福に少し期待してもいいんじゃないだろうか。
ーーーーー
裏切られた事に胸をはるんだ 信じようとした証拠なんだ
疑った分だけ損したんだ
「傷ついた」なんて言いたかねぇや だから
ーーーーー
人を信じる事は、諦めちゃいけない。
もちろん裏切ってくる人間がいる事は事実だ。
自分が裏切る立場になる事だってあるだろう。
でも、
人を信じる事で、
自分が救われるのは間違いない。
誰かを信じられる、それだけで十分すごいことなんだ。
裏切られたところで、
信じた事は間違いだったとか、傷ついたとか、
そんな風に言いたくない。
ーーーーー
この先何があったって僕らは 振り向かずに走って生きたい
つまずいた昨日も助走だったと 言い張るため走って生きたい
それだけで 僕等の笑えない思い出も ただの笑い話になるんだ
あの時ついに崩れ落ちた膝で 暗闇の中 駆け抜けて
あの時砂を握った掌で 確かな物を掴みたくて
分かるだろう これがスタートラインだよ 僕らの終わりで始まり
ーーーーー
これからどんな出来事があっても、
前を向いて生きたい。
どんなに大きな失敗をしても、
どんなに大きな挫折をしても、
今この瞬間を肯定するんだ。
あの失敗は、挫折は、今この瞬間のために必要だったんだ。
そう言い張るだけで、地続きである過去も内包して自分を肯定できるんだ。
ほら、この瞬間もまた新しいスタートラインだろう。
ーーーーー
日々が過ぎて 年が過ぎて 大切な人達が過ぎて
急がなくちゃ 急がなくちゃ なんだか焦って つまずいて
もう駄目だ 動けねぇよ うずくまってても時は過ぎて
考えて 考えて やっと僕は僕を肯定して
立ち上がって 走り出して その時見上げたいつもの空
あの頃とは違って見えたんだ あの日の未来を生きてるんだ
ーーーーー
いろんなことがものすごい速さで過ぎ去っていく。
なんだか自分も急がなきゃいけない気がして。
急いで、焦って、ついには大きくつまづいて、
だめだ、だめだって自分を責めて。
それでも時間は止まることなく進んでいて。
時間が経つにつれ、状況も変わってきて、
考えて、考えて、ようやく自分を肯定して。
自分のペースでもいいから前を向こうと決意したその時、
いつも見えていた空が、景色が違って見えた。
つまづいた自分の未来の姿がいまの自分自身なんだ。
ーーーーー
全てを無駄にしたくないよ 間違いなんて無かったよ
今の僕を支えてるのは あの日挫けてしまった僕だ
ーーーーー
どんなことも無駄じゃない、間違いなんかじゃない。
あの頃の自分があったからこそ、いまの自分があるんだ。
あの頃の自分が、いまの自分には必要だったんだ。
ーーーーー
「ありがとう」とか「愛しています」とか 分からないけど歌っていたい
信じてくれたあなたは正しかったと 言い張る為に歌っていたい
それだけだ 僕の背中を押すのは あなたが喜んでくれる顔
ーーーーー
気がつけば、自分を信じてくれる人がいる。
信じてくれるあなたは正しかったんだと言えるよう、
歌っていたい、生きていたい。
そうして喜んでくれるあなたの笑顔に、
僕の背中が押される。
それだけで、また自分を肯定できる。
ーーーーー
あの時伸ばし続けたこの腕で 大きくギターかき鳴らして
あの時何も言えなかった口で 下手くそな歌を 叫んで
いつだって ここがスタートラインだよ 僕らの終わりで始まり
ーーーーー
気付いた時にはすでに始まっていて、
かと思えば終わりを迎えていて、
その繰り返しの中で僕らは生きているんだ。
さあ、いまこの時もスタートラインだ。
下手くそな生き方でも構わない、
格好がつかなくてもいい、
いまこの瞬間を、精一杯生きるんだ。
今までの自分全てを肯定するために。
〜おしまい〜
あぁ、いい歌詞だ。
書きながら浸ってしまう。
そしてこの調子で対の詩についても見ていこう。
ーーーーー
努力は報われる、
とか
時間が解決してくれる、
とか
君に言っても眉をひそめるだけだろうし
僕自身を騙せそうにもないし
だから僕の足跡だけ
せめて僕の足跡だけ
ーーーーー
今、苦労の中にいる人に
「努力はいつか実を結ぶものなんだよ」
「時間が経てば、見える景色が変わってくるものなんだよ」
なんて唐突に言っても、
しっくりこないだろう。
きっと怪訝な顔で眉をひそめるに違いない。
もちろん、僕自身も必ずそうなる、なんて信じていないわけで。
報われないことだってあるし、時間に解決できないことだってある。
だからせめて、
この言い文句は僕の足跡だけにそっと残しておく。
ーーーーー
このくたびれた外套は
随分僕を守ってくれた
長い距離を共に歩いて
冷たい雨風をしのいで
晴れた日には涙と一緒に乾かした
ーーーーー
言ってしまえば、自己暗示だ。
これまで僕自身を守るために並べてきた理屈たちは、
気がつけば随分長い時間を共にしてきたように思う。
いろんなことがあった。
辛いことや苦しいこと、もちろん幸せなことも。
どんな時も共に過ごしてきた。
ーーーーー
僕にはもう必要ないから
好きに使ってくれて構わない
必要ないならそれでいい
そこに捨てといて構わない
ーーーーー
でももう、僕には必要ない。
理屈で守らなくても、僕は人を信じるだけの強さがある。
だからこの言い文句は
君の好きなように解釈してくれていい。
君も必要がないなら忘れてくれても構わない。
ーーーーー
僕の始まりが始まった
用がすんだらそれでいい
寂しいけれどさようなら
新しい歌を口ずさんで
どこまでいけるか知らないが
またどこかで会う日まで
ーーーーー
理屈を脱ぎ捨てた、新しい僕の始まりだ。
なんだか名残惜しい気もするけれど、今までの自分とはこれでお別れだ。
新しい僕がどこまでいけるのかはわからないが
その途中でまたその存在が必要になるまで、さようなら。
〜おしまい〜
ここまで書き終えて、
やはり僕の中で一番大切な曲だ、と再認識した。
僕はこれまでamazarashiの曲に幾度となく励まされてきたが、
その中でもこの曲は群を抜いている。
恐れ多いことは重々承知の上だが、
僕の人生のテーマソングにさせて欲しいくらいだ。笑
これまでの自分を肯定するためには、
今この瞬間を正しいと言い張る、
自分自身を信じてくれている人を正しいと言い張るんだ。
時間の手柄にされるのはなんだか癪だけど、人生長いもんだ。
5年10年経てば、失敗のひとつやふたつ、笑い話にできる時がきっと来る。
だから胸を張るべきだ。
これまでの失敗や挫折を経験した自分自身だからこそ
今この瞬間を生きているわけだから。
読み返すと「考察」と言うより「解釈」みたいだな。笑
あくまで僕から見た「終わりで始まり」は、こんなだよって。
そんだけ言えたら上出来だ。
なんせ僕の感性は乏しい。
こうやって文字に起こせただけでも自分自身を褒めてあげるべきなんだろう。
今この瞬間も自分は正しかったと言ってやるんだ。
...なんてな、乱用注意。笑
さて、今日もきっと何かの終わりで始まりなんだろう。
文字に起こしたらなんだか気持ちも穏やかだ。
この気持ちは大事に胸の中にしまっておこう。
それじゃ、おやすみなさい。
1コメント
2018.10.23 08:48