ハルキオンザロード ー考察ー


今日は最新フルアルバム「地方都市のメメント・モリ」から

「ハルキオンザロード 」を考察していく。


以前、「さくら」の考察記事でも話したように

この曲では、ひろむが東京でバンド活動をしていた当時のボーカル

「ハルキ(仮名)」に焦点をあてている。

描かれている情景はひろむ曰くほぼノンフィクションである。


静かで寂しげなメロディが印象的なこの曲、

会員限定サイトではひろむの日記に公開された歌詞のみ先行して読むことができたのだが、

メロディに乗るとこうも鮮やかに情景が浮かんでくるものかと思うと

やはり音楽の持っている力というか、影響は計り知れない。


早速、考察を始めていこう。

毎度のように、僕なりの歌詞の解釈から入る。


ーーーーー

僕らの別れは最初から決まっていた 墓石に刻みたいくらいさ 君と過ごした数年は

ピックアップトレーラーにそれぞれ雑魚寝して 寝汗に染み入る虫の声 真空パック夏の情景

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バンドで成功することを夢見て、メンバーと揃って上京する。

当時、身をすり減らしてまで打ち込んでいたバンド活動。

虚しくも成功は叶わず、バンドは解散することとなる。

そして、その中でも特に親しかったであろう、

ハルキとの日々も、解散を機に、終わりを迎える。


今から思い返すと、

僕らの別れは最初から決まっていたように感じる。


どういうわけだろう。

ある夏の日、トレーラーで肩を並べて雑魚寝して、その寝汗に虫の声が染み込んでいく

そんなどこか汚れたままの日々を過ごした君との数年は

僕の墓石に刻みたいくらい、忘れたくない、失いたくないものなのだ。


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ハルキはホントに人生が下手だから 子供のキャッチボールみたいに 全く不器用な放物線

ああ ああ 放り投げた身体が 落下したとある夏の一夜 そこが我が家だって顔で生きていた

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ハルキ、君はこの世界で生きていくにはあまりに不器用だった。

力の抜き方や狙いの定め方を考えもせずに、

がむしゃらになってボールを投げる子供のキャッチボールのように

本当に不器用で、見ていて危なっかしいくらいだ。


その投げ出した身体で、

吸い込まれるほど広く、落ちていくほどに遠い、夏の夜空を見上げる。

まるで僕はここで生きているんだ、と言い張るような顔ぶりで彼は夜空を見上げる。


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道なき道、すらない道 辿ったのではなく描いたのだ

世界は白紙のノートで 留まるにはまだ広すぎる

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バンドの成功に、僕らの人生に、教科書なんてない。

こうするべき、という道もないこの旅路。

僕らは夢を辿ったのではなく、描いていたのだ。


僕らが旅するこの世界は白紙のノートのように、

あまりにも広く、あまりにもわからないことだらけで、

こんなところで止まるには早すぎるよな。


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生きるという名前の列車に乗って 時間の後ろ姿、追い越した

相席をした彼の名は悲しみ それを知ったのはもうずっと後

夜を散らかし 夏を散らかし それを露骨に照す夜明け

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僕らにとってバンド活動こそが人生だ。

バンドを続けることがそのまま生きるということだった。

そう、これは生きるための旅路。


その旅路に相席をした君は、悲しみの象徴だ。

別れの象徴だ。


でも、それに気がついたのはずっと後。

いずれ来る別れを、そこに付随する悲しみを、知らずに一緒に過ごしてきた。

当時はそんなことにすら気がつかずに、時間が立つのも忘れて

生きることに精一杯だったな。


夜も、夏も、僕らは好き放題に生きて、

夜明けの太陽はそんな僕らをあざ笑うかのように露骨に照らしつける。


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ライブの打ち上げで 酒癖悪い奴に絡まれて さっさと逃げ出して、そいつのバンに立ち小便

美しい記憶はいつも夜だ ぼろい電飾看板と月と 二人だけが浮き彫りのエッチング画

想像力で飛べるなら宇宙の果てじゃなく僕の中 見たい景色を掘り返す 墓暴きみたいに掘り返す

でかい夢ほど僕らを汚す 例えば作業服のペンキ跡 ロマンチストはいつも泥まみれ

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ライブの打ち上げ、酒癖の悪い奴に絡まれて、

嫌気がさした僕らは仕返しに、そいつのバンに小便をかけてやった。


思い出される記憶はどれも決まって夜中の出来事。

汚れて美しい僕らの記憶。

ボロい電飾看板とおぼろげな月で景色は霞んで、二人だけが浮き彫りになる、

さながらエッチング画のような情景。


想像力でどこまでも飛んでいけるのであれば、

僕は宇宙の果てじゃなく、自分の記憶の中を飛んでいきたい。

見たい景色を見たいだけ掘り返す。

宝物を掘り当てようとする墓暴きの真似事みたいに。


ロマンチストは夢を見るものだ。

その夢がでかい夢であればあるほど、僕らを汚す。

作業服のペンキ跡のように、泥だらけになって必死に生きていく僕らの姿。


ーーーーー

積み上げたら積み上げた分 その重さで身動きとれないな

世界中全部ガラクタ 眩いばかりのガラクタ

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積み上げてきたこの汚れて美しい記憶で

彼を、悲しみを、ぬぐいきれない。

もはや身動きが取れないくらいに。


この世界の全てがガラクタのように見える。

汚れていないだけの、光り輝いて眩しいだけのガラクタだ。


ーーーーー

馬鹿でかい音楽、投げやりな酩酊 世界の真理が休符の隙間

愛した彼女は砂漠の一滴 時間の速度で飛び散って干上る

夜を散らかし 夏を散らかし それを露骨に照す夜明け

ーーーーー


必死になって鳴らしてきた僕らの音楽は、未だ一向に認められない。

徐々に投げやりになっていく僕らを酒が潤す。


バンド活動の間に愛する彼女もできた。

それは世界の真理を見つけたかのような瞬間だった。

しかし、君と過ごした数年に比べたら、まるで一瞬の出来事だった。

すぐに蒸発して消えてしまう、砂漠のひとしずくのような、そんな一瞬の出来事だった。


夜も、夏も、僕らは変わらず好き放題に生きて、

夜明けの太陽はそんな僕らを、相変わらず、あざ笑うかのように露骨に照らしつける。


ーーーーー

馬鹿笑いした夜が耳鳴りになって 眠れぬ夜に刃先を突き立て

僕らの間に川が横たわる 時間という名前の川が

青春と呼ばれた無残な抜け殻 君が変わったように僕も変わった

僕らの別れは最初から決まっていた 一番眩しい恒星ほど 燃え尽きるのも早いんだ

ーーーーーー


バカ笑いしたあの夜の笑い声が、

眠れない夜に耳鳴りになって僕を襲う。

楽しかった日々が、今の僕を苦しめる。


どれほどの時が経ったのだろう。

いつの間にか、こんなにも遠く離れてしまった。


僕と、僕の記憶に残る君の間には、

大きな時間の壁が、隔たりが立ちふさがる。


失いたくなかったあの情熱は、

今となっては青春と名付けられ過去となって、

その実感はこんなにも遠のいている。

まるで抜け殻のように。


この長い時間を経て、君も僕も変わっていったんだ。


そう、僕らの別れは最初から決まっていたんだ。


僕にとって一番眩しい君だったからこそ、

大きく膨らんだ赤い恒星と同じように、

燃え尽きるのも早かったんだ。


ーーーーー

ハルキ、君は僕にとって腫瘍だ 手の施しようない未知への衝動

眩い光ほど誘われる虫 白日の下でどこへ行けばいい?

時の移ろい 人の移ろい 今でも露骨に照らす夜明け

ーーーーー


ハルキ、君は僕に腫瘍だ。

気にしないように顔を背けても、その存在感は薄れることなく、

取り除こうと思っても、手が届かない。


今の君がどうしているのか、僕は知らない。

まばゆい光に誘われる虫のように、

この未知への衝動を、このやり場のない気持ちを、

明るく照らされた空の下で、どこに持って行けばいいのだろう。


時が過ぎて、人も過ぎて、景色が変わった今でも

夜明けの太陽は、相変わらず、あざ笑うかのように照らしつける。


〜おしまい〜



この曲は解釈にすごく迷った。

大前提として、ハルキは今、生きているのか、死んでいるのか。

前半には「放り投げた身体が 落下したとある夏の一夜」

後半には「未知への衝動」

とあるように、自殺を連想させられるフレーズが見受けられる。


実際、他の方の考察では自殺を前提に語られていたりする。


ここを深掘りするために、もう一つの楽曲を紹介させてほしい。

amazarashiの楽曲の中には、「ハルキオンザロード」と同じように、

ひろむが昔、一緒にバンドをやっていた友達に向けた歌がある。


「ひろ」という曲だ。


中島美嘉がカバーしたりなど、amazarashiの中ではかなり有名な曲かもしれない。

いずれこの曲も考察をするつもりだが、

「ひろ」という楽曲はその題名の通り「ひろ」という名前の友人に向けて書かれた曲だ。

(ここで混同しがちな人もいるが、ひろ≠ひろむである、別人である)


ひろはドラマーで不良でみんなから好かれるような友人だったと

ひろむが語っており、19歳で亡くなっている。


ここで疑問なのが「ひろ」と「ハルキ」は同一人物なのかどうか。

もし同一人物だとしたら「ひろ」が亡くなっているので「ハルキ」も亡くなっている、

と考えられるだろう。

実際そう解釈している人だっているかもしれない。


しかし、僕は「ひろ」と「ハルキ」は別人なのではないか、と思う。


根拠として、「ハルキ」は「さくら」という楽曲にも登場した友人だとひろむが話しており、

当時のバンドのボーカルだと「さくら」のインタビューで話していた。

一方で「ひろ」の担当はドラムであるとこちらもひろむが解説していた。

ここが食い違っている。


もう一つ、「ハルキオンザロード」では「酩酊」という単語があるように

酒に酔っている描写があることから、「ハルキ」が成人している可能性が高い。


対して「ひろ」は19才で未成年である。


まぁ、ひろはセブンスター(煙草)が好きな不良だし

未成年ながら酒を飲んでいても不思議じゃないけれども。


なので、僕はどうしてもハルキが死んでいる、とは言い切れなかった。

ということで、生きているのか死んでいるのかわからない、

こういう曖昧な解釈になっているのでご了承を、

という長々とした言い分だけで

貴重な考察が終わってしまいそうだ。



この楽曲は、大切な人との別れを描いている。

そして、時間が経つほどに、

あれほど美しい情景がどんどん眩しく霞んでしまい、

過去の出来事だったと突きつけられる。


「さくら」でも考察したように

二人の間には特別な絆があったはずだ。

それが逆に今の自分を苦しめるくらいに儚い思い出になるなんて

その当時は思わなかった。


思い出を積み重ねることで

いずれ来る悲しみを育てていたなんて、誰が想像しただろうか。



この曲にはもう一つ、大事なポイントがある。

それは「汚れ」に対して「美しい」と描写している部分が目立つ。

これについては、対の詩を読んでから考察していこう。


ーーーーー

バイト中にした、他愛のない女の子の話や

むかつく先輩の話や、茶化した未来の話や

安全帯の金具のゆるみや、鉄筋架台のレベルの上げ下げや

担いだスピーカーの重さや、CD-RのMTRや

失踪したドラマーや、打ち上げではしゃぎすぎた渋谷の恥ずかしい夜や

金がなくて、会場の外で聴いてたあのフェスのあのバンドや

そういえば、あのバンドももう解散したって

僕らが主演してた映画の主題歌みたいに思ってたけど、

そういう若者が、あの会場の外にはごろごろいたよな

ーーーーー


前半部分はひろむとハルキ、二人の時間の回想部分であろう。

バイト中の、女の子の話、先輩の話、未来の話、

仕事の風景と、バンド活動の風景、

本当にありふれた生活から滲み出る二人の信頼関係。


ドラマーがいなくなって、でも打ち上げでははしゃいで、

苦労も娯楽も二人で分かち合ってきた。


バイトで生活していくだけの金を稼いでも、

フェスに行くには足りなくて、

せめて好きなバンドは会場の外で耳を澄まして聴いていた。

まるで僕らの人生の主題歌みたいだなって当時は思っていたけれど、

時が経って、そのバンドももう解散した。


あの時は僕らは僕らのことしか見えていなかったけれど、

きっと僕らとおんなじような若者はあの会場にはたくさんいたんだよな。


ーーーーー

時が経って、忘れてしまうことと、鮮明に覚えてること

その差は一体何なんだろう

あの頃に戻りたい、なんて微塵も思わないよ

だって最悪だったもの

間違いなく最悪だった

美しい思い出っていうのは

大抵、最悪な夜なんだ

ーーーーー


時が経って、

忘れてしまうことと鮮明に覚えていることとあるけれど、

一体何が違ったのだろう。

その差は一体何だったのだろう。


だからと言って、それを確かめるために

あの頃に戻りたい、なんて一切思わないよ。


だって、最悪だったもの、間違いなく。


僕が覚えている思い出ってのはどれも美しいものばかりで、

そしてその美しい思い出ってのは大抵最悪な夜なんだ。


最悪だったからこそ、

悲しみや儚さがあったからこそ、

美しかったんだ。


だから、僕はあの頃に戻りたい、なんて思わない。


〜おしまい〜



美しい思い出とは何か、

ということが対の詩では語られている。


あくまで僕の考えだが、

美しいものっていうのは同時に儚くもあるものだ。

いずれ失われてしまうからこそ、その美しさは際立つもので、

そしていずれ失われるからこそ、そこに付随する悲しみは避けては通れない。


逆も言える。


悲しい出来事こそ、僕らは美化しがちだ。

最悪なことがあったからこそ、

それまでの何でもない出来事に特別な美しさを見出してしまう。


僕らは散々、この人生を汚すように生きて、

それこそ最悪な日々を過ごして、

でも時が経って振り返ると、それが代え難い特別な、美しい光景に見えるのだ。



ちょっと骨が折れたのでここまで。


詩的な曲は解釈が難しいと前回、前々回と思い知らされてきたのに

また懲りずに挑戦してしまった。


思い返すと僕は詩的な曲が好きなのかもしれない。

ならばこの作業はより好きな曲を深めるためのものだ。


結局自分のためなんだもんな。


多少の無理があっても、

自分のしたいようにできた時、

思わぬ充足感に見舞われる。


きっと僕はそれを求めている。


だめだ、さすがにもう頭が回らない。

寝ます。


おやすみなさい。

ここじゃない、どこかを探す。

amazarashiの楽曲考察がメインです。 思考の至らない点、過度な深読み、勘違いなどなど 未熟な部分は多いと思いますが、 自分なりに努力して成長していくので 温かい目で見守っていただけると嬉しいです。 気ままに更新していきます。 もし気が向いたら、コメントやメッセージをいただけると一層やる気が出ます。 よろしくお願いします。

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