ひろ ー考察ー


今日はフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」より

楽曲「ひろ」を考察していく。


この曲はamazarashiの楽曲の中でも屈指の人気を誇る名バラードだと僕は思っている。

中島美嘉がカバーしたり、YouTubeでもamazarashiの公式アカウントから

弾き語りライブの映像が公開されていることから耳にしたことのある方は多いのではないだろうか。


秋田ひろむの友人で昔のバンド仲間であった「ひろ」に向けた手紙のような楽曲となっている。

ひろは不良で、ドラマーで、みんなに好かれるような人柄で、

そして、歌詞を読めば分かるだろうが、19歳で亡くなっている。


「友人に向けた手紙の体で、わい自身の現状を顧みる歌です」

という秋田ひろむのコメントを踏まえ、

友人の死に直面し、それからしばらく時間がたった時、何を思い、何を感じ、何をこの歌で表現したかったのか、そこを深掘りしていけたらと思う。



ーーーーー

ひろ お前に話したい事が 山ほどあるんだ聞いてくれるか? 

何度も挫けそうになった事 実際 挫けてしまった事 

お前の好きだったセブンスターを 吸うのも肩身が狭くなったし 

彼女も「禁煙しなきゃね」って 言うもんだから まいるよな 

ーーーーー


あれからしばらく時間が経って、

僕は夢を思う中で、挫けそうになったことや、実際にくじけてしまったこと、

お前に聞いて欲しいことがたくさんあったんだ。

聞いてくれるか。


そういえば、僕の彼女が、お前の好きだった煙草を指差して

「禁煙しなきゃね」なんていうもんだから、

尚更、肩身が狭い思いをしてるよ。


ーーーーー

あの日と同じ気持ちでいるかっていうと そうとは言い切れない今の僕で 

つまりさお前に叱って欲しいんだよ どんな暗闇でも 照らすような強い言葉 

ずっと探して歩いて ここまで来ちゃったよ 

ーーーーー


今もあの日と同じ気持ちでいるかって聞かれると

正直、そうとは言い切れない自分がいる。


でもそれじゃダメだから、あの時みたいにお前にまた叱って欲しいんだ。


どんな暗闇にも光を照らすような強い言葉で。

その言葉をずっと探して歩いてきたら、こんなところまで来ちゃったよ。


ーーーーー

もう無理だって言うな 諦めたって言うな そんな事僕が許さねえよ  

他に進むべき道なんてない僕らにはさ お似合いの自分自身を生きなきゃな  

いつも見送る側 それでも追いかけた 間に合わなかった夢を憎んだ 

でもお前の居ない世界でも なんとかなるもんだ 

それが悲しい お前はまだ19歳のまま 

ーーーーー


「もう無理だっていうな、諦めたっていうな、そんな事、僕が許さねえよ」

お前はよくこんなことを言ってくれたよな。

バンドくらいしか、他に進めるような道もない僕らにはお似合いの、

自分自身を全うして生きていかなきゃな。


思い返せば、僕はいつも見送る側だった。

それでもお前の後ろ姿を追い続けた。

今更になって、叶った夢を憎んだりもした。

こんな風に、お前がいないままでも世界は進んで、

それでいて、なんとかなってしまうことに、どうしようもなく悲しくなるんだ。

だってそうだろ、僕の頭の中で呼びかけるお前は

今もまだ19歳のままなんだから。


ーーーーー

やりたい事をやり続ける事で 失う物があるのはしょうがないか 

やりたい事も分からなくなったら その後におよんで 馬鹿みたいだな 

ーーーーー


やりたいことをやり続けることで、

避けられない別れや失う機会があるのは仕方がないことかもしれない。

実際に僕は夢を叶える代わりに失うものがたくさんあった。

それでいて、お前がいないのにこんなことやっていていいのかな、なんて

やりたいことまで分からなくなったら、その後に及んでバカみたいだよな。


ーーーーー

どんなに手を伸ばしても届かないと思ってた 夢のしっぽに触れたけど 

今更迷ってしまうのは 僕の弱さか 日の暮れた帰り道 途方も無い空っぽに 

襲われて立ちすくむ 都会の寂寞に 

ーーーーー


お前と一緒に夢を追いかけていた頃は、どんなに手を伸ばしても手が届かないと思っていたけれど、

今ようやくその機会を掴むことができて、本当だったら嬉しくて離さないだろうに、

今更、このままで大丈夫だろうかなんて迷って尻込みしてしまうのは

僕の弱さだろうか。


日のくれた帰り道、嬉しいはずが、どこまでも空っぽな心持ちにふと襲われて、

都会の寂寞の中、立ちすくむ。


ーーーーー

もう無理だって泣いた 諦めたって泣いた でもそんな物きっと自分次第でさ  

他に進むべき道なんてない僕らにはさ お似合いの言い訳を選んでただけ 

いつも見送る側 それでも追いかけた 諦めかけた夢を掴んだ 

でもお前の居ない世界じゃ 喜びもこんなもんか 

それが悲しい お前はまだ19歳のまま 

ーーーーー


もう無理だって、諦めたって、何度も何度も泣いた。

でも物事の限界を決めるのはきっと自分次第なんだよな。


バンドくらいしか、他に進めるような道もない僕らにはお似合いの、

言い訳を選んでいただけなんだ。


思い返せば、僕はいつも見送る側だった。

それでもお前の後ろ姿を追い続けた。

あの時諦めかけた夢を、その機会を、やっとの思いで掴んだ。

でもあれだけ苦労して叶った夢も、お前がいないと、こんなにも喜べないものなんだな。

だってそうだろ、僕の頭の中で思い出すお前は

今もまだ19歳のままなんだから。


ーーーーー

今年も僕は年を取って お前は永遠に19歳で 

くだらない大人になってしまうのが 悔しいんだよ 悔しいんだよ 

なぁひろ 僕は今日も失敗しちゃってさ 「すいません、すいません」なんて頭を下げて 

「今に見てろ」って愛想笑いで 心の中「今に見てろ」って なぁこんな風に 

かっこ悪い大人になってしまったよ だらしのない人間になってしまったよ 

お前が見たら絶対 絶対 許さないだろう?  

だから僕はこんな歌を歌わなくちゃいけないんだよ 

ーーーーー


また今年も僕は歳をとって、

お前はこれまでも、きっとこれからもずっと19歳のままで、

僕だけこんなくだらない大人になってしまうことが、どこまでも悔しいんだよ。


なぁひろ、僕は今日も失敗しちゃってさ、

「すいません、すいません」って何度も頭を下げて、

でも心の中では「今に見てろ」って愛想笑いなんか浮かべて「見返してやる」って、

こんな、格好悪くて、情けなくて、だらしのない大人になってしまったよ。


お前が見たら、許さないだろうな。

きっと叱られるんだろうな。

だから僕はこんな歌を歌わなくちゃいけないんだよ。


ーーーーー

ガキみたいって言われた 無謀だって言われた それなら僕も捨てたもんじゃないよな 

誰も歩かない道を選んだ僕らだから 人の言う事に耳を貸す暇はないよな 

いつも見送る側 なんとか飛び乗った 身の程知らずの夢を生きている 

でもお前の居ない世界じゃ 迷ってばかりだ 

でも それもガキらしくて 悪かないのかもな 

僕は歌うよ 変わらずに19歳のまま

ーーーーー


周りから「ガキみたい」って言われて「無謀だ」って言われて、

でもそれなら僕も捨てたもんじゃないよな。


誰も歩かない、歩こうとしない道を選んだ僕らだからこそ、

こんな風になれたんだ。

人の言うことに耳を貸す暇なんてないよな。


僕はいつも見送る側だった。

お前の後ろ姿を追いかけて、ようやく訪れた夢になんとか飛び乗った。

なんとも身の程知らずな夢の中を、僕は生きている。


お前のいない世界じゃ、僕一人じゃ、いつも迷ってばっかりだ。

でもそれもガキらしくて、僕らしくて、悪くはないのかもしれないな。


僕はこれからも歌うよ。

歌い続けるよ。

ガキのまま、お前と一緒に歌った19歳の時の気持ちのまま。

これからもずっと、変わらずに。


〜おしまい〜



一緒に夢見た友達を残して、

自分だけが夢を叶えてしまった。


嬉しいはずが、素直に喜べない。

むしろ心の中は驚くほど空っぽで、

こんな僕を見たら、きっとお前に叱られてしまうよな。


だから、この歌を歌わなきゃいけない。

あの時と同じ気待ちで歌わなきゃいけない。

だってお前は19歳のまま、僕の中にいるんだから。



僕も死に別れてしまった友人がいる。

仲が良かったかと言われると、そうとも言い切れないが、

彼と僕との間には、誰にも言えない秘密があった。


そのせいで、未だに思い出されることも、

苦しくなることも、正直あるのだが、

今の僕を、彼が見たら、どう思うだろう。


薄情だと言うだろうか、

叱るのだろうか、

それとも応援してくれるのだろうか。


なんにせよ、今の僕を見て

彼が失望しないように

僕は僕の道を歩んでいかなきゃいけないのかもな。



歌詞の中に「”都会”の寂寞に」とあるが、

ここであえて「都会」を出しているのは

バンドで成功することを夢見て上京したが、惜しくも叶わなかった当時の彼らの姿を

青森に住みながら、夢にまで見たライブやレコーディングの度に東京に行き来するひろむが思い出す、

という心情背景が込められているような気がして、個人的にとてもぐっとくる。



対の詩も見ていこう。



ーーーーー

 思い出したくない事も一杯あって 

そんなものをわざわざ掘り起こして、いじくって 

何か作り上げた様な 

成し遂げた様な気になって 

誇れるものってなんだっけ 

そもそも誇るものって必要だっけ 

ーーーーー


お前と過ごした日々の中には

思い出したくないこともたくさんあって、

そんなものをわざわざ掘り起こして

自分の傷跡をかさぶたを剥がすようにいじくって。


それを歌にしたところで

何かを作り上げたような、成し遂げたような気持ちにはなるのだけれど、

僕らにとって誇れるものってなんだっけ。

そもそも誇れるものってそんなに必要だっけ。


ーーーーー

今が楽しくて、 

笑ってたくて、 

ずっと笑ってたかったから歩き続けて 

その道の先がこんなんだったなんて 

思いもしなかったろ 

ーーーーー


今がただ楽しくて、

これからも笑っていたくて、

ずっと笑うために夢を追いかけて、歩き続けた先が

こんな風になっていただなんてお互い思いもしなかったよな。


ーーーーー

どっかで間違えたのかもしれない 

道に迷ったのかもしれない 

でも 

どんな場所にいたって 

あの日みたいに笑う事は出来ると思うな 

というか そうするべきなんだ 

だって僕らは 

笑いたかっただけなんだ

ーーーーー


どこかで道を間違えたのかもしれない。

あるいは、道に迷ったのかもしれない。


でも

道を間違えたところで、

道に迷っていたところで、

関係ない。


どこにいたって、あの日みたいに笑うことはできるはずだ。

というか、そうするべきなんだ。

だって僕らは笑いたかっただけなんだ。


それを叶えてやらなきゃな。


〜おしまい〜



できることなら、

いつまでもずっと笑っていたい。

お前と一緒に笑っていたい。


でもそれは、

お前がいなきゃ叶わない。


だからと言って、諦めるわけにもいかないから

どんな場所にいて、

どんな状況の中にいても、

笑ってやるんだ。


せめてそうすれば、

少し切ないけれど、

あの時の僕の、僕らの、

「笑っていたい」という夢は叶うだろう。



以下に「ひろ」の弾き語りライブの動画を貼り付けておく。

もし興味があれば覗いてみて欲しい。



さて、明日は待ちに待った「amazarashi × Aimer Asia Tour 2018 in TOKYO」である。

久々のライブ参戦ですごくそわそわしている。

参戦レポートも後々書いていこうと思う。


個人的に、前回参加したライブから、今回のライブに至るまでのたった短い間に、

こんなにも状況や景色が変わって行くものかと思うと神妙な気持ちになる。


何はともあれ、たくさんのものを持ち帰って、

またこれから生きて行く上でのエネルギーになれば、幸いだ。


この記事を読んでいる方で、明日、参加する方がいたら、

ぜひ一緒に楽しみましょう。


それでは。


ここじゃない、どこかを探す。

amazarashiの楽曲考察がメインです。 思考の至らない点、過度な深読み、勘違いなどなど 未熟な部分は多いと思いますが、 自分なりに努力して成長していくので 温かい目で見守っていただけると嬉しいです。 気ままに更新していきます。 もし気が向いたら、コメントやメッセージをいただけると一層やる気が出ます。 よろしくお願いします。

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